『対岸の彼女』

角田光代著 文藝春秋
直木賞受賞作品という理由だけでは、この本を手にしてはいなかった。
数日前、新聞の読者投稿欄に、作者角田光代の文章(「直木賞を受賞して」という寄稿)が、
「心地よい、難しい字を使わない文章」、と書かれてあったのが心に残ったから。
直木賞受賞作品なのに易しい文章を書く作者・・・そこに何か深いものを感じてみたかったから。
本屋で、帯を読んだ。
「大人になれば、自分で何かを選べるの?・・・あのころのような、全身で信じられる女友達を必要なのは、大人になった今なのに 」この文でもう買うことを決めた。
3歳の子を持つ主婦小夜子と、旅行会社を経営する独身の葵。
この本は、小夜子と葵の今の日常とふたりの関わり、
そして葵の高校時代の日常(葵と親友ナナコの時間)が…交差しながら進んでいく。
今の小夜子と葵、立場も考え方も、持っているものも持っていないものも違う。
小夜子はそれでも、葵に惹きつけられるものを感じて接近していく。
だが、葵に見透かされすぎているような怖さと、
でもわかってもらえてはいなかったという寂しさを勝手に抱く。
複雑な気持ちは津波のように押し寄せる。
しだいに小夜子は葵の過去を見つめることで、実は自分の根底でも葵と同じものが流れていることに気づく。
そう、あの頃、葵がナナコといれば何でもできるように思えた感覚、
どこへでも行けるという自信、
でも移動しているだけで本当はどこへも行けない焦燥感に苦しんだ、
そんな過去を見つめることで。
いつしか小夜子の頭に、制服を着た葵とナナコが浮かんだ。
対岸にいるふたりが指差す方を見ると、
川に架かる橋がある。
頭の中の小夜子も、制服の裾を躍らせて橋に向かって走り出した。
本に入り込んで一気に読んでしまった。
読み終えたとき、時計を見ると夕方の5時。
夕飯の支度をしなければならない時間なのに、気持ちが切り換えられない。
我に返ろうと、夕刊を取りに外に出た。
ちょうど息子が自転車で「ただいま~」と帰ってきた。
息子の顔が懐かしく思えるくらい、
この本に浸かってしまったことに気がついた。
この記事へのコメント
本に「出会って」しまったら、一気に入り込んでしまって時を忘れてしまいますよね。
子どもに声をかけられて、フッと我に返る。よくあります。
やっと147ページまで読んだとこ(^^;)。
あ~、続きが気になる~(><;)
読み終わったら、また帰ってきます♪(いつになるのだ!?)
耳すまさんのお薦め、今度買ってきて読みますね。
優先順位からいっても読書よりやらなければならないことが沢山あるのですが、読み始まると止まらないんですよね^_^;
アメタマさんへ*
まったく同じです^^時間になったからと途中でやめるのは辛いですよね。今回は5時に読み終えたので夕食は作れましたが(^_-)
怜仁さんへ*
…ということは、ちょうど半分くらいですね。早く読んでしまいたい気持ちと、読み終わりたくないような気持ちありますよね~お帰りお待ちしてます^^
pipimamaさんへ*
pipimamaさんも読んでましたか(^_^.)私は小夜子に自分を重ねながら読んで
しまいました。特に小夜子の子どもに対する気持ち痛いほどわかりました。今度は『空中庭園』読んでみます。
mapleさんへ*
本が日本で買うより高いのは辛いですね。ネットで読書できる話も聞きますが、範囲は限られているのでしょうか・・・